モノホライズンレコード

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【株式会社佐々木印刷】指紋が消える液晶保護フィルム「kietta!(キエッタ)」

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株式会社佐々木印刷

1980年創業。岩手県北上市。台紙を無くした「ハグレス」をはじめ、有機作物に貼っても安全な「菜果ラベル」など、ユニークなシールラベルを生み出す。2015年、富士通の公開特許「チタンアパタイト」を活用した「指紋の消える液晶保護フィルムkietta!(キエッタ)」を開発。

 

インタビュー

モノホライズン編集部

 

佐々木信雄氏

株式会社佐々木印刷代表取締役社長。持ち前の課題意識からユニークなラベルを量産。「面白いものをつくる」「社会のニーズに応える」という2つのテーマを実践し、社屋にはボイラー設備、太陽光パネル、LED照明を導入するなど、環境に対する取り組みにも力を入れている。趣味は釣り。

赤坂良幸氏

北上アビリティセンター副所長。「指紋の消える液晶保護フィルムkietta!(キエッタ)」のパッケージデザイナー。「良いモノは会話が生まれるモノ」という考えでデザインを心がけた。普段は、地域コミュニティ全体とのつながりを考えた福祉活動を行っている。

会社紹介

Q:佐々木印刷について教えて下さい。

1980年、33歳のときにこの岩手県北上市で創業しました。
家内興業という形で、親父、お袋、弟、妹、女房、俺の6人で仕事を始めたんですね。
お金が一銭もなかったので、国民金融公庫から親父の土地を担保にお金を借りて、1台の印刷機を購入するところから始まりました。
当初はハンドラベル*1を作っていました。
それから、時代がバーコードに変わっていった為に、バーコードを作る機械を購入して対応してきました。

株式会社佐々木印刷

本社入り口

日本はこのままでは負ける

Q:現在のように、ユニークな製品を生み出されたきっかけはなんでしょうか?

今までは普通のラベルを作っていたのですが、25年くらい前に中国の1枚のラベルを見てもの凄いショックを受けたんです。
日本ではだいたい1円くらいするだろうと思っていたラベルが、実は10銭だったと。
これではもう絶対に日本は負ける、なんとかしなくちゃということで考えたのが、ハグレスというラベルです。

ハグレス

台紙をなくした画期的なラベル「ハグレス」

コストの50%以上を削減した発想

Q:ハグレスはどういうものなのでしょうか?

ハグレスは、「台紙を無くする」ラベルです。
当時だいたい100円/㎡したタック紙*2のうち、使う方が40円、60円分が捨てる方だったんですね。
単純に、セパレーター(台紙)を無くすことで、1円のラベルが半分の値段にはなるだろうというところで、考えたんです。

工場内を説明して回る佐々木社長

工場内を説明して回る佐々木社長

時代の変化に常に対応してきた

Q:これまでの台紙付きのシールラベルから台紙をとっぱらうといった大胆な発想でハグレスを作ってこられたわけですが、そこから見える佐々木印刷としてのあり方を教えていただけますか?

ハグレスもそうですけど、やはり時代のニーズに合ったものを作らないと絶対売れない、競争に負けてしまいます。
このように価格競争が激しい中で、付加価値のある、「みんながこれ面白そうだなと手に取ってみるようなモノをどうやって作るか」というのが一つのテーマとしてあります。
もう一つのテーマは、「その時代が何を欲しがっているのか、どんなものが必要なのか」ということを考えています。
このテーマをコラボした時に、ハグレスであったり、連ラベルであったり、菜果ラベル*3であったり、そういったものが考えられたんです。

連ラベル菜果ラベル

佐々木社長のおっしゃる通り、時代に合ったものを作るというのは、日本のものづくりが高いクオリティを保ち続けるためには必要不可欠な事だと思います。
ただ、「イノベーションが」と騒がれていますが、画期的なものを生み出すのに複雑な思考はいらないと思うんですよね。
例えば、ハグレスは、「台紙のコストがかかるので、台紙を無くし」ました。そのためにどうするのかという点が一番エネルギーの必要なところなんですよね。
先日、吹きこぼれさせない準圧力鍋「クックレインボー」を作った株式会社クックレインボーさんを取材させてもらいましたが、そちらも「ガスコンロの吹きこぼれは故障の原因につながる」ならば「吹きこぼれない鍋を作ろう」というとても自然で、シンプルな思考だったんですよね。
その開発にとても苦労したということだけで。

指紋が消える液晶保護フィルム「kietta!」について

kietta!の写真

Q:今回、私どもが展示会でご紹介いただいた「kietta!(キエッタ)」についてですが、これまでの「シールラベル」というものから一歩踏み出した素敵な製品だと思います。 このkietta!を制作されたきっかけは何でしょうか?

2013年に特許庁の企画で、「大企業の特許を中小企業に貸しましょう」というセミナーがあったんですね。
その時に、富士通さんの「指紋が消える*4」というのがあったんですね。
それですごく興味を持ちまして、その話を直接聞きたいということでお願いしました。

絶対マネのされないシールを作りたい

我々が作っているラベルっていうのは、誰でもできちゃうんですね。まだ道半ばですけれども、私の頭の中では、「絶対マネのされないシールを作りたい」ということをずっと前から思っていたんです。
そういうことがあって、「指紋が消える」というものにすごく興味を持ったんです。

地域コミュニティのデザイナーとして

Q:赤坂さんに伺います。今回、佐々木印刷の「kietta!」について、どのように関わっていらっしゃるのでしょうか。

もともとは障害者福祉をやっていまして。(本業は北上アビリティセンターの副所長)
今までの福祉ってどちらかというと「内向きの福祉」で、施設の中にいるともう施設の中だけの視点しか持っていないというところがあったんです。
今はこれをもっと外に発信して、いろんな人と関係を築きながら地域のコミュニティにつながる福祉デザインをしています
同じように、いろんな人が関わり合い、つながるようなものづくりをやりたいなと思っていたんですね。そんな時に佐々木社長から「kietta!」のパッケージデザインをお願いしたいという話があったんです。

福祉をもっと外に発信しながら地域コミュニティのデザインをしたいという赤坂氏

福祉をもっと外に発信しながら地域コミュニティのデザインをしたいという赤坂氏

佐々木社長は、シールの台紙を無くしたりと、「ハード」の面で環境の事を考えていらっしゃる。私はハードではなくて「ソフト」の面で気持ちのこもったデザインを考えたいなというところがありました。

引き算のデザイン

Q:具体的に、どのような部分にこだわってデザインをされましたか?

家電量販店に行ってどんなパッケージがあるのかと、スマホの液晶保護シールを見てみると、同じようなものがたくさん並んでいて、これと同じようなものを作るんじゃなくて、「これ買うしかないよね」というようなシンプルなデザインにしようと思ったんですね。
なので、デザインはできるだけ余分な情報を削った「引き算」にしました。「ナニコレ?!」と言うようなものにしたいなという思いから、このデザインにしました。

良い商品=会話が生まれる商品

Q:ネーミングもわかりやすいですよね

そうですね笑
指紋が消えるっていう機能がある液晶保護フィルムなので、もうシンプルに「消えった?!」というところからつけた名前です。
自分の定義の中に、「良い商品というのは会話が生まれるもの」というものを持っているので、この製品を通じて「ちょっと見てみて!」と誰かに伝えてもらえるような製品になれば良いなと思っています。

これからの佐々木印刷

Q:これからの佐々木印刷についてお話を伺いたいと思います。 時代のニーズに合わせるのもそうですが、この先もユニークな製品を作る上で大切にしたいことが他にあれば教えてください。

COP21*5も開催されましたけれども、環境について私もすごく考えているんですね。
社内も自社のボイラーを使って印刷から出たゴミを燃やして暖房にしたり、屋根には太陽光発電パネルも設置しました。去年の売電金額は約150万円でした。
それから、社内の蛍光灯も380本LEDに替えてます。
「ハグレス」が仮に日本中のシールに置きかわり、台紙がすべてなくなったとしたら、年間330万本もの木材が救われるわけです。
毎年、これだけの材料を使って台紙を作っているわけですね。地球全体だと約1450万本と言われています。

これからの佐々木印刷

森林や自然をいかに守るか、それは趣味の釣りをしていても強く感じることなんです。
環境問題によっていろんな災害が世界中で起きているわけですよね。
これは誰かが何かのアクションを起こさなくちゃいけない。
したがって、私はこれからも印刷会社として、環境のことを考えた製品を作っていきたいですね。

会社ウェブページ

モノホライズン

 

E-mail:monohon@chugai-tec.co.jp
TEL:03-3863-0044

 

*1:商品に値段をつけるラベルなど

*2:タック紙とは、ラベルやシール用の印刷紙のこと

*3:果物などの食品に直接貼っているシールは果たして安全なのか?という問題意識から、口にしても安全なノリを使用した菜果ラベルを開発した

*4:チタンアパタイト特許第3678606号他

*5:2015年11月30日から12月11日まで、フランス・パリで、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)、京都議定書第11回締約国会議(CMP11)が開催された。